クゥ(犬)にみる愛着障害の治りかた
愛着障害のクゥ(犬)
クゥは2か月半で家にやってきた男の子。幼い時に親犬と離され、遠くから運ばれて、数匹の犬仲間と一緒に数日すごしていました。
まさに、愛着を剥がされた状態です。クゥは愛着障害の状態だったと思います。
犬仲間と過ごすのはハイテンションで楽しかったかもしれませんが、安心感はなかったと思います。
家に来た日も興奮状態です。私は、犬を飼うのは初めてなので、こわごわです。興奮とこわごわな一匹と人がどんな時間を過ごしたか?
クゥは私に駆け上り、ペロペロして一所懸命に確かめているようでした。くしゃみをしているのが気になりました。手や指や首に甘噛みをします。噛んだらゲージに入れるように指導されました。ゲージに入れると、しばらくクンクン啼いていますが、しばらくすると脱力したように寝ています。
これは、まずい
シャットダウンしている
甘噛みをしたら、ではなくひどくなったらゲージに入れることに変更し、遊びの時間をたくさんとるようにしました。
翌日、朝は食べたのに、お昼は少ししか食べず、カーッと声をだしています。何かが絡んでいるのか? 途中で咳だと気づきます。くしゃみはひどくなっているようです。心配になって動物病院に連れていくと、環境変化による風邪だと言われ、様子を見るようにとのことでした。
動物病院には、いろいろな犬たちが待っていて、おっかなびっくりながら、診察ではおとなしくしていて、眠そうにしています。
帰宅して、夜ご飯にはトッピングをすると、後ろ足があがるほど前のめりで全量食べました。
3日目は、トイレでうんちを1回でき、私がすごく喜びました。ゲージの中では、ちゃんとトイレでうんちもおしっこもしています。ゲージの外にいると、タイミングを逃してしまい、一瞬の隙をついてしてしまうことも多いのですが、しそうな感じが少しずつわかってきて、トイレに連れていくとできる時もあります。
安心感がクゥの中にでてきた
2日目からお腹を見せるようになり、飛びついてばかりだったのが、足元で寝たり、身体にくっついていたりできるようになってきました。安心感、がでてきたのだと思います。
飛びついていつも確認しなくても、クゥの中に安心感が育ってきたのだと思います。
ママを確認しなくても、いてくれる。いなくなっても帰ってくるという感じでしょうか。
愛着対象が内在化されたのだと思います。
ママがどこにもいかないよう、足の上に乗ってきたりしています。
注目することとしないこと
おしっこやうんちを床でします。ゲージの中にいるときは、トイレでしますが、まだまだ床でします。
先輩飼い主さんからは、失敗したときは、何もいわずにさっと片付け、トイレでしたときにはたくさん褒めるようにと教わりました。
たまたまトイレにいるときにうんちができたので、大喜び(ちょっと声のトーン高め)で褒めました。うんちをしそうな格好の時にはトイレに連れて行き、少しずつできるようになってきました。ご飯のすぐ後、トイレでくるくるまわって、「母さん、(僕)できた?」というような顔つきの時もでてきました。
おしっこを何回も床ですると、どうしても「ああ、また・・・」と思ってしまいます。そう思いながら片づけていると、たぶんそれをわかっているのでしょう。こちらも、次こそは失敗させない、と思ったりします。
よく考えると、犬にとってはトイレでおしっこするのは普通ではないことです。人の都合であり、できないのが自然ですよね。
愛着関係ができていったら、やがて覚えてくれるだろう。だんだんできてきていると思うと、床で粗相をしても、さっと片付けられるようになってきました。
状況に対する見方が変わる。認知が変わるということです。同時に、注目することとしないことのメリハリをつける。最初は大げさなぐらいでちょうどいいかもしれません。クゥは見て相手をしてくれる(注目される)と大変に喜びます。
注目自体がご褒美
褒めることの準備として、どのような行動を褒めるのかをわかっていることが大事。そしてある程度ブレない。
次に、相手の行動を見る
見ている中で褒めることがでてくるのです。
してほしくない行動は、注目しないようにします。
これがなかなか難しい、態度や心で悪口をつぶやきそうになりますが、クゥに伝わってしまいます。その時に認知を変える考え方やそのための情報や知識が重要になります。
愛着障害は改善します
これは、犬だからでしょってお感じになっているかもしれません。
たしかにそうです。
人間同士なら、もっと双方向の部分があると思います。赤ちゃんなら、目で見ることや声、ミルクやお乳、包まれる感触によるここちよさそうな感じのフィードバックもあるでしょう。
胎児はお腹にいる時から、嫌な音が聞こえてきたり、言い争いなどがあったり、お母さんがストレスに曝されている状況があると、身体を固くして身を護ります。逃げだすことはできませんので、背中側を固めるのです。それを恐怖麻痺反射といいます。最初のストレス対処法です。
胎児は、固有受容感覚、前庭覚などの神経細胞が発達することにより、恐怖麻痺反射を統合していきます。そしてこの世界に出てきます。
けれど、恐怖麻痺反射が残ったまま大人になっている人もいます。胎児期の愛着障害と言い、かつてはボーダーラインケースと言われてきました。(すべてが病理というわけではありません。)
愛着障害があると、基本的信頼感を持ちにくく、人に対して緊張、または警戒状態であることが常態化してしまいます。人づきあいが悪くなくても、どこかで疑っていたり、真の友情や愛を育むのが難しくなります。そのため、常に孤独感があったりします。
人間関係がうまくいかないと悩んでいたり、人と付き合うことを諦めてゲームや2次元の世界で多くの時間を過ごすというやり方もあります。人と無理してつきあうのではなく、得意な一つのことを極めていくという方向もあると思います。
愛着障害は病気というわけではなく、愛着の発達のどこかにヌケが生じている状態です。
抜けている段階の課題を十分満たしたら、次の段階に進みます。
愛着は次のような段階で発達していくと言われています。引用:愛甲修子「愛着障害は治りますか?」花風社
第8段階 内在化期
第7段階 移行対象期
第6段階 後追い期
第5段階 自他分化期
第4段階 共感期
第3段階 自他未分化期
第2段階 出生期
第1段階 胎児期
一つの段階を満たすことで、次の段階に進みます。まるでシャンパンタワーでグラスがいっぱいになると次の段に流れるように。
例えば、第1段階の胎児期は、母と胎児は一体で生きていますよね。すべては母に委ねられていますので、委ねることが課題。
床に仰向けに寝てみてください。背面は床についているでしょうか? 肩甲骨、お尻、ふくらはぎ、かかとはついていますか? 床についている感じを味わうことはできるでしょうか? 自分の呼吸を見守ってみるのはどうでしょうか?
床との対話はどうだったでしょうか?
効果があったのかどうかは、ご自身でわかると思います。別に何も感じない、というのも大丈夫です。今の自分は「別に、何も」と思ったことを大事にしましょう。
愛着障害というと、養育者の問題とお感じになるかもしれません。赤ちゃんによっては受け取りにくさを持っていたり、養育者のキャッチしにくさがある場合もあると思います。ですが愛着障害はお母さん(養育者)のせいでも、子どものせいでもありません。
受け取りにくさがある場合、身体に働きかけることで効果がでやすいと言われています。
身体が育つと眠りが深くなり、脳の緊張が減るなどの余裕ができるのでやりとりがしやすくなるようです。
クゥでいえば、ここが自分のお家だと感じるようになり、ママ(飼い主)が世話をしてくれる、見てくれる、喜んでくれるという最初の段階が満たされたので、ママの注目をさらに得たいと行動するようになったのだと思います。
最初の数日は興奮状態だったのが、安心感を得て、足元で一緒にいたり、寝られるようになった。遊ぶ時は、遊ぶという状態になってきたのだと思います。
言葉のないクウを一生懸命にお世話することは、言葉のなかった頃の自分自身を世話しているように感じます。それが私の愛着を育んでいっていると思います。
親から愛着をもらえなかったから、親が上手に愛着をくれなかった、あるいは子どもにうけとりづらさがあったから、愛着障害となる状況はいろいろだと思いますが、いつからでも取り戻していくことはできると思います。